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伝説

預言者イエスと聖なるハンカチ

伝説:エデッサ(ウルファ)王アブガル5世が病にかかったことに始まりました。

アブガルの伝説では、アブガル・ウッカマ5世は最初のキリスト教王でした。預言者イエスがキリスト教を宣言してからしばらくして、キリスト教を受け入れ、国民にも布教しました。エデッサ王アブガル・ウッカマ5世は病を患い、大変な思いをしていました。王は預言者イエスが病を癒すとききましたが、病気のために自分がエルサレムに行くことができません。そこでハンナンという名の使者を送り、イエスを信じ、彼の信仰を学びたいことを手紙に書き、王の元へ来てほしいと招待しました。この使者は腕の良い画家でもありました。ハンナンはイエスに使いの手紙を渡してから、彼の顔を描こうとしましたが、うまくできませんでした。それを見たイエスは自分の顔を洗って、渡された布で顔を拭いてハンナンに返しました。するとどうでしょう、布にイエスの顔の写しが描かれているではありませんか。ハンナンは返書と共にこの布を持ってエデッサへ帰りました。アブガル5世はこの布のおかげで病から救われました。この布は都市の入り口のうちの一つの中に隠されました。イスラム教がこの地方で強くなると、聖なる布もムスリムの手に渡りました。ビザンツ帝国との戦いで捕虜に捕らわれたムスリムたちがいました。ビザンツ人たちはこの捕虜と引き換えに聖なる布の引き渡しを求めました。結果的には聖なる布と捕虜は交換で引き渡されました。

この布はイスタンブルからイタリアのヴァティカンに行ったとも、未だにウル・ジャーミーの井戸の中にあるとも言われています...

 

ハリル・ウル・ラフマン

言い伝えによると、ネムルットという名の冷酷な王がいました。この冷酷な支配者はある日夢を見ました。その夢を解釈させて知ったことは、生まれてくる子供のうちひとりが彼を殺してしまうということでした。ネムルットはその年生まれる子供を殺すように兵へ命じました。

その頃、預言者イブラヒムを身ごもっていたサラはある洞窟へ逃げ、そこで子供を産みました。しかしその子供を置いて家へ戻りました。子供にメスのガゼルが乳を与えました。月日が流れ、兵はイブラヒムを洞窟で見つけ、ネムルットのもとへ連れて行きました。子供がいなかったネムルットは彼を引き取り、育てました。

彼はネムルットの冷酷さ、不公正さ、偶像崇拝、そして市民にも偶像崇拝を強いているのを目の当たりにして、人間が自分の手で作った偶像など神であるわけがないと言います。市民は恐怖のため何もいうことはできません。ある日、イブラヒムは宮殿内の偶像保管場所へ行き、それらを斧で壊してその斧を最も大きな偶像の手に持たせました。宮殿の者たちはイブラヒムがやったことをネムルットへ知らせました。問い詰められたイブラヒムはこう答えました。「見えないのですか?斧は一番大きな偶像の手に握られていますよ。あれがやったのでしょう。」

ネムルットは怒り狂って、こんな石の塊に過ぎないものがどうやって斧を持って偶像を壊すというのか、と言いました。これを聞いたイブラヒムは、一塊の石が斧をもって何も壊せないなら、貴方をどうやって守ることなどできましょう、と言いました。ネムルットはこの言葉に驚きましたが、我に返ってイブラヒムを火の中に投じるように命じました。

何日もかけて集められた薪が山のように広場に積み上げられ、火がつけられました。イブラヒムは城塞の上から石弓で炎の中へ投げ入れられました。

ところが炎は預言者イブラヒムを燃やすどころか、彼が落ちた場所は湖に代わり、薪は魚に代わりました。こうしてシャンルウルファにある、食べると中毒を起こして死ぬという言い伝えがある聖なる魚のバルックル・ギョル(魚の湖)ができたという伝説が生まれました。

 

アイン・ゼリハ

言い伝えによるとネムルットの娘ゼリハは預言者イブラヒムに恋をしていました。父親にイブラヒムを許してもらえるように懇願しますが、ネムルットは決心を変えません。そこでゼリハも自分を火の中に投じますが、そこが湖になりました。

預言者イブラヒムが落ちた場所にできた湖には、ハリリ・ウル・ラフマン湖という名前がつき、ゼリハの落ちた場所にできた湖はアイン・ゼリハと呼ばれています。

また別の伝説によると、アイン・ゼリハは、その信仰に傾倒し、恋をした預言者イブラヒムが死んで、あまりにも涙を流しすぎたのでそれがアイン・ゼリハ湖になったと言われています。

 

メム・ウ・ズィン

ジズレの君侯エブダルの息子ミル・ゼイヌッディンには、ズィンとスィティという名の美しい姉たちがいました。ズィンは色が白く君侯のお気に入りで、スィティのほうは色が黒く糸杉のように痩せていました。タジディンは君侯の枢密院宰相の息子でした。メモはメミアランというあだ名で有名になり、枢密院書記の息子タジディンの生涯の友で親友でした。

当時3月にお祭りが催されていました。1年のうちこの日にジズレの市民たちは子供も大人もおめかしをして草原へ行き、若者たちはイスラムの戒律に従って相手探しをします。メモとタジディンは女の子のような格好をしてバザールへ出かけました。バザールを行き交う人々を眺めていると、突然男の格好をしたふたりの姉妹を見かけ、気を失ってしまいました。スィティとズィンはこの女の格好をしたふたりの男を見ると近づいていき、自分たちの指にはめていた指輪を外して彼らの指にはめ、そこを去りました。

メモとタジディンが我に返ると、自分たちの指に「ズィン」と「スィティ」と刻まれている指輪がはめられているのに気づきます。メモの指には「ズィン」と書かれたルビーの、タジディンの指には「スィティ」と書かれたダイヤモンドの指輪がはめられていました。そうして彼らは、この指輪の持ち主の二人の娘が、自分たちのようにお祭りを楽しむために仮装をしていたことを知りました。

スィティとズィンの、魔女のような教育係のヘイゼブンは、彼女たちの青ざめた顔を見るとその理由をききました。彼女たちは起こったことを他には内緒で彼女に説明しました。教育係は指輪を持ってこの二人の男の名前を明かすためにある占い師の元へ行きました。その後医者の格好をして、病人を治すためにジズレの町に出ました。懐に何本かのメス、書物、ビン、袋、そして薬を少し入れた彼女があたりをうろついていると、彼女を見た若者たちが病気になったタジディンとメモの所へ連れて行きました。ヘイゼブンはタジディンとメモも二人の娘のように恋の病にかかっているのがわかり、指輪を交換しようとしました。テジディンは指輪を渡しますが、メモはいやがりました。

燃え盛る恋心が頂点に達したメモとテジディンは、起こったことを友人たちに話しました。それを聞いた友人たちはまずタジディンのために、何人かのジズレの学者や司法者などを交えた男性たちのグループで、当時のジズレ君侯のミル・ゼイヌッディンの元に代理人として行き、スィティをタジディンの嫁にしてくれるよう頼みました。君侯はこれを承諾し、7日7夜の宴会が開かれました。

メルギュヴェルリ・ベキルという名のある悪人がいました。このべキルという男は君侯の門番でコーヒー係でした。タジディンはこの男が悪人であることを知っていました。君侯にそれを伝えたにもかかわらず、君侯は彼を辞めさせませんでした。ベキルはメモとタジディンの悪口を君侯にいつも言っていました。この悪口は時と共に君侯に影響を与え、君侯はズィンをメモに嫁がせたくなくなりました。このためにメモをズィンと別れさせました。メモは1年間監獄に入れられてしまいました。

君侯はメモを殺してしまおうと考えました。悪口を言うベキルはズィンを監獄に行かせ、メモがズィンを見ればどっちにしても死んでしまうと言いました。そこで君侯はズィンを監獄へ面会に行かせることにしました。

監獄に行ったズィンは、メモが鎖につながれているのを見ましたが、結婚の承諾を得てきたと言いました。しかしメモは神への愛を見つけたと言って死んでしまいます。タジディンはすべての元凶となったベキルを殺してしまいます。

メモはアブダリエ神学校の墓地に葬られました。ズィンはずっとメモの墓の前で泣いていましたが、しばらくするとそこで亡くなりました。真実の愛から神への愛へ到達したメモとズィンは、あの世で結ばれたのでした。

 

セムビルフロシュ

地方を支配していた王には大変ハンサムな息子がいました。その息子は楽しく暮らしており、頻繁に狩りに出かけていました。

狩りに出かけたある日、墓から外へ出てしまっている白骨を見てしまい、彼は死の真実と向き合うことになりました。裕福であっても貧しくても、死の前では何も関係がないこと、ある日自分も白骨になると思い、すぐにアッラーにすがってこの世の富をすべてあきらめ、ただアッラーの道を行くことを、畏怖を感じながら膝まずいて誓いました。住んでいた宮殿や贅沢を未練なく捨て、妻と共に旅立ちました。国々を巡って籠を作って売りながら生計を立てていました。彼はもう「ゼムビルフロシュ(カゴ売り)」になったのです...子供たちと妻と共にテントを背にしょい、古ぼけた服を着て、村から村へ、町から町へ移り歩く、アッラーの僕になったのです。

こうして行商を続けていくうちに、苦悩が彼を最後の土地へ誘いました。ゼムビルフロシュはファルキン・ベグの妻ハートゥンの注意を引きます。彼女はカゴを買うからと言って彼を宮殿へ呼びました。彼に会うとハートゥンはまるで雷に打たれたようになりました。君侯の妻であるのに、恋の炎が燃え上がってしまったのです。大変なことになってしまいましたが、自分の気持ちを抑えることができません。そこでこの恋を詩に表そうとします...

ゼムビルフロシュはカゴを持ってくる

店から店を巡る

ハートゥンはクラクラしてしまう

知恵を絞る、時間を創り出すために

声をかけている、彼を一目見るために

おいで、夫よ、寝台の上へ

夫のハレムはおまえにはハラール

すてきなもみ上げをあげよう、お前に

わたしの目はガゼルの目

わたしの胸は高原のように広く

わたしの身体はバジルのように香る

おまえの願い通りに美しく、ふさわしい...

しかしゼムビルフロシュはこの世の富をあきらめた托鉢僧です。なにしろ懺悔をしたのです。アッラーの奴隷になることを誓ったので、ハラールを犯すことは彼の頭にはありません。ハートゥンの愛の誘いを断るのに、彼も詩で返答しました。

ハートゥン、私は懺悔をしたのです

美しい女よ、私は懺悔をしたのです

子供たちは家で悲しんでいます

アッラーに誓ってできません...

この詩をもってゼムビルフロシュはハートゥンの愛を拒否しました。ファルキンの君侯の妻ハートゥンは、拒否の返事を認めません。死ぬほどゼムビルフロシュを愛してしまったのです。どうやってでもハンサムなゼムビルフロシュのものになりたいのです。ハートゥンのしつこさにゼムビルフロシュは逃げてしまいます。しかしハートゥンはあきらめず、そこら中を訪ねて歩き、ゼムビルフロシュが生活しているテントを見つけました。一晩テントで過ごすためにゼムビルフロシュの妻に関願します。願いをかなえてくれたら全財産と宝石をあげてもいいと言います。一晩でいいのだと。ハートゥンがあまりにもしつこいのでゼムビルフロシュの妻は子供たちを連れてそこを去りました。ハートゥンはゼムビルフロシュの妻の服を着て布団にもぐり、ゼムビルフロシュを待ちました。ファルキンの町に夕闇がせまってくるころ、ゼムビルフロシュはカゴを売り終えてテントに戻ってきました。ハートゥンが布団にいるとも知らず、同じ布団に入りました。しかし先に寝ていた女が妻ではないことを、ハートゥンの足についていた足環の音でわかってしまいました。それを知ったとたん、彼はテントから出て行ってしまいました。

伝説には諸説があります。ゼムビルフロシュはハートゥンから逃れられないことがわかると、宮殿の塔に上って身投げしたという説、また別の説ではゼムビルフロシュは途方に暮れて神に命を奪ってくれと懇願し、死んでしまいます。その後を追ったハートゥンも同じように願い、二人とも死んでしまったということです。