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サソン

サソンは「豊穣の土地」の最も果てにある場所のうちの一つです。沼や山に囲まれた地理にあります。都市の背後にある2821メートルの荘厳なメレト山は、同時にこの地方にとって神聖な山でもあります。地元の人々の間では「メレト山がぶつかっても(やらない)」という言い回しが良く使われています。

サソンは、この地上におけるアラビア語が広まっている最北端の地です。

かつてはタバコの葉で有名で、収入のすべてがタバコによるものだったサソンは、現在はちみつ、イチゴといった作物の生産が盛んです。

サソンは、トレッキングやスポーツ・フィッシングにも適した場所です。地方で最も清潔で健康によい温泉もサソン―バトゥマン街道の分岐点にあります。

 

サソン渓谷

サソンのの起伏が激しい地形と険しい山々の間には多くの美しさと神秘が隠されています。この美のうちのひとつが、サソン・ギュルゲンリ地域にある「ゾグラット」渓谷です。サソン郡にあるこの渓谷は、素晴らしい景色で本当に必見の場所です。

また、ユジェバー、シャルタッケ、ハルキス、メレト地方にある大小の渓谷も、発見されるのを待ちわびています。

サソン伝説

トロス山脈からザーロス山脈まで、山々の間の岩山に映えるオレンジ色は人々の目をくらませます。それは「泣いている花嫁」だという人もいれば、「悲しみの花」だという人もいます。また、毎朝その中央から水が出てくるので、「泣いているチューリップ」と言われることもあります。ムスリムにとっても、キリスト教徒にとっても神聖な花とされています。十字架にかけられたイエスを象徴するものだからです。

サソンには「逆さチューリップ」が咲いていると聞くと誰もが驚き、このチューリップを見ようと春になると山登りにやってきます。その葉にすべての文化のモチーフを秘めた逆さチューリップには、いくつもの伝説があります。

サソンのヘルキス山の斜面に住む村人たちは、逆さチューリップの伝説を語ってくれます。この伝説は、あるムスリムの若者である羊飼いイブラヒムと、美しいアルメニア人の娘ベスナの愛の物語です。

ケルハサン村に住むイブラヒムは、メレトとヘルキス山で羊を放牧して生活していました。畜産が家族の唯一の収入源であったので、羊飼いイブラヒムはこの仕事を大事にしていました。冬、自分の村であるケルハサン村で羊の群れを放牧し、春になると緑豊かなアルメニア人の村、ヴァルタヌスに連れて行きました。羊飼いイブラヒムは、春になるとともに自分の村から広い草原があるヴァルタヌス村で多く時間を過ごしていました。

ヴァルタヌス村の裕福な商人、アドラン・アーには美しい娘がいました。その娘はあまりにも美しかったので、彼女を一目見たものはすぐに心を奪われてしまうのでした。その娘の名はベスナと言いました。ベスナの母親セタ・ハートゥンは、夫と子供たちにの世話に明け暮れる良妻賢母でした。

村の中編で羊飼いをしていたイブラヒムは、ある日泉でこの娘を見かけ、心臓が高鳴りました。そしてベスナに恋をしてしまったことを知ります。ベスナの方も、勇敢でハンサムな羊飼いのイブラヒムに心を奪われてしまいました。羊飼いのイブラヒムとベスナ、ふたりの恋人たちは秘密に合うようになり、ふたりの仲は日ごとに深まっていきました。

ベスナは、以前から村の泉で水を汲むのをいやがっていましたが、イブラヒムに心を奪われてからは、彼に会うために、早い時間からすすんで行くようになりました。何時間もイブラヒムと草原や山の丘を歩き、夕暮れ近くになると水壺に水を汲んで家へ向かうのでした。春になるとヴァルタヌス村は何千もの色とりどりの花が咲き乱れ、その香りに人々は酔いしれました。ふたりの恋人たちはその景色を感動して眺め、水のように過ぎていく時間を恨めしく思うのでした。

秋が過ぎ、冬が近づいてくると吹いてくるかすかな風が、イブラヒムが自分の村へ帰る時期を知らせるのでした。次の春まで自分を忘れないようにと、ベスナは自分の村で咲く美しいチューリップの球根をイブラヒムへ渡して彼の村に植えるように言いました。イブラヒムは毎年ベスナがくれた球根を、誰にも触らせないようにケルハサン村の小高い岩山の斜面に植えました。このチューリップを自分の目のように大事して育て、ベスナの香りをこのチューリップの香りに例えて胸いっぱいに吸い込むのでした。このようにして何年もの間この恋は続きました。イブラヒムのチューリップ園は毎年素晴らしく魅惑的になっていきました。

羊飼いのイブラヒムは、毎年味わうこの寂しさを終わらせるため、ベスナに求婚することを決意しました。しかしそれは簡単なことではありませんでした。それを自分の家族に打ち明けたところ、激しい反対にあいました。イブラヒムの家族は、ベスナが改宗してムスリムになることが条としてこの結婚に同意しました。

春の訪れとともに羊飼いのイブラヒムは、羊の群れとともにヴァルタヌス村へ向かい、ベスナへそのことを話しました。ベスナは愛のためにムスリムになることを承知し、それを自分の家族にも話しました。それを聞いた母親は目を波ででいっぱいにして、彼らの信仰によればこの結婚はあり得ないと言いました。するとベスナは悲しみのあまり食事ものどを通らなくなりました。この深刻な事態を前にした母親のセタ・ハートゥンは、父親のアドラン・アーに打ち明けました。怒り狂った父親は改宗を絶対に認めず、自分たちの宗教でない者に娘はやれないと言いました。

アドラン・アーは娘をイブラヒムに会わせないように、娘を部屋に閉じ込めました。セタ・ハートゥンはそれをイブラヒムへ話しました。これを聞いたイブラヒムは、ベスナをさらうことを決意しました。夜半、ベスナをさらって自分の村へと過酷な旅路につきました。

セタ・ハートゥンは朝早くにベスナが部屋にいないことに気づくと悲鳴を上げ、家じゅうの者を起こしました。ヴァルタヌス村の住民たちはアドラン・アーを中心として、世にも美しい娘ベスナを探し始めました。しかし娘はさらわれてしまったので、どこにもいません。

ケルハサン村ではすでにベスナは改宗し、ムスリムになってイブラヒムと宗教上の婚姻を行いました。こうしてふたつの家族の間に修復不可能な深い溝が刻まれてしまいました。アドラン・アーは武装してイブラヒムの村、ケルハサンへ向かいました。彼が村に着くとイブラヒムの親戚がアドラン・アーにふたりを引き裂かないよう懇願しましたが、聞き入れてはもらえませんでした。アドラン・アーは娘を取り返さずにはどこへも行かないと断言しました。

事態の深刻さを理解した許されぬ恋に陥っているふたりは、ケルハサンの険しく切り立った岩山に上りました。ベスナとイブラヒムは手をつなぎあって岩山から下へ飛び降りてしまいました。バラバラになったふたりの遺体は、イブラヒムが植えたチューリップ園に散らばりました。チューリップ園はすぐに血の海になりました。

しばらくすると、誰もが驚愕する現象が起こりました。美しいチューリップの茎が曲がって。恋人たちから流れた血の上に涙を流しているではありませんか。愛のために命を捨てたベスナとイブラヒムの花は、首が曲がった「逆さチューリップ」になったのです。そしてサソンの高い岩山には、毎年春になると嫌な臭いをまき散らして、この不死の愛を人々にもう一度思い出させるのです。